ミサキマメイタボヤの出芽
ホヤの出芽の方法は、種によって実に様々です。それらについての紹介は、
またいずれどこかでしたいと思います。このページでは、ミサキマメイタボヤの
出芽のしくみを紹介します。

図の下は親個体の模式図です。胃腸(gut)と鰓(pharynx)が
示してあります。 前のページ の模式図と似ているのでわかって
いただけると思います。このホヤは”体壁出芽”という方法で
芽体を作ります。芽体は親個体の体壁の膨らみとして生じます。
”体壁”は外側の”表皮(epidermis)”と内側の”囲鰓腔上皮
(atrial epithelium)”という2枚の上皮、そして、その間に
はさまれた間充織細胞(血球)からできています。
芽体は親から離れて、新しい体づくりを始めます(図の上・左)。
まず、親から離れたときの親に一番近い側の囲鰓腔上皮が細胞分裂
を始めます。この部分の囲鰓腔上皮は、やがて間充織空間に陥入
して、胃や腸になっていきます(図の上・中央、gut primordium)。
この過程は囲鰓腔上皮という分化した細胞から、胃や腸といった
別のタイプの分化した細胞への”分化転換”と考えることができます。
そのあと、鰓や脳神経節などいくつかの組織・器官が、囲鰓腔上皮
から生じます。図の上・右には鰓の原基(pharyngeal primordium)
を示してあります。
出芽は、再生と似ています。どちらも、体の一部から、足りない部分を作り
補うことです。再生とは事故などによって失われた部分を作ることです。
これに対して、出芽は最初から用意されたプログラムに従って、正常な営み
として行われるという点で異なっています。
私たち人間にも皮膚や一部の臓器(肝臓など)を再生する能力は備わって
います。しかし、私たちには出芽することは不可能です。なぜ、同じ脊索動物
でありながら、ホヤは体のほんの一かけらから完全な体を作りなおすことが
でき、私たちにはそれができないのでしょう?私たちはそれを知りたいのです。
そのために、私たちは、芽体の体づくりを進める遺伝子の働きを研究しています。