生体機能物質工学実験 II

3‐1. 酵素の精製
(クルマエビのアルギニンキナーゼの精製)


[ アルギニンキナーゼの抽出 ]

(1)冷凍エビ約(7 g)に 4℃ に冷やした 20 倍量の buffer: 10 mM Tris-acetate
   buffer (pH 8) containing 0.1 mM DTT,140 ml を加え,ホモジナイズする.
   Buffer の作製法は?

(2)ホモジネートを遠心管に入れ,バランスを十分調節した後,4℃,10000 rpm,
   10 分間遠心する.

(3)遠心終了後直ちに遠心管を取り出し,各班上清の 1 ml をエッペンドルフ
   チューブに分取する.チューブは氷冷する.残りの上清をガーゼでろ過し氷冷
   したメスシリンダーに移す.容量を測定する.その後氷冷したビーカーに移し,
   50%飽和になるように硫安をガラス棒でかきまぜながら徐々に加える.硫安が
   完全にとけたのを確認したら,4℃,10000 rpm,10 分間遠心する.

(4)遠心終了後直ちに遠心管を取り出し,ガーゼでろ過した上清を氷冷したメス
   シリンダーに移し,容量を測定する.その後氷冷したビーカーに移し,80% 飽和
   になるように硫安をガラス棒でかきまぜながら徐々に加える.硫安が完全にとけた
   のを確認したら,4℃,10000 rpm,15 分間遠心する.

(5)沈澱に目的タンパク質が含まれているので,上清を注意深く,完全にすてる.

(6)沈澱を氷冷した 5 ml の 10 mM Tris-acetate buffer (pH 8) containing
   0.1 mM DTT に溶かす.

(7)各班 2 本のエッペンドルフチューブに 1.0 ml ずつ分取し,4℃,
   12000 rpm,10 分間遠心する.遠心終了後,直ちに上清を新しいエッペン
   ドルフチューブに移す(沈澱物を決して取らないように).
   チューブは氷冷して保存する.


[ ゲル濾過によるアルギニンキナーゼの部分精製 ] 

(8)高速液クロにセットしたゲル濾過カラム(Superose 12 or Superdex 75:
   1 x 30 cm)を 10 mM Tris-acetate buffer (pH 8) containing 0.1 mM DTT
   & 50 mM NaClで十分に平衡化する.(流速は 0.5 ml/min;タンパク質の
   存在は波長280nmで検出).

(9)前項の(7)で得たサンプルの 250 ml をカラムにアプライする.

(10)モニターを見ながら,タンパク質が溶出してきたら 1.5 ml チューブに分取する.
   複数のピークが溶出されるのでピークごとに分取すること.1 ml 以上は同じ
   チューブに分取しないこと.タンパク質を分取したチューブは直ちに氷中に
   保存する.


[ SDS 電気泳動 ]

(11)前項の(3),(7)及び(10)の各チューブの 50 ml を,新しいエッペンドルフ
   チューブに取り,50 ml の SDS 電気泳動用サンプル buffer と10 ml の
   2-メルカプトエタノールを加える.それらを 3 分間加熱 (98℃)する.

(12)SDS 電気泳動用ゲルは空き時間に作製しておく(作製方法は別途指示する).
   電気泳動装置をセットし,処理したサンプルをアプライする(アプライ量は 5 ml
   と 25 ml の 2 種類おこなう).分子量のマーカーもアプライする.

(13)電気泳動終了後,染色及び脱色をおこない,アルギニンキナーゼ(分子量 40
   kDa)の含まれるフラクションを同定する.泳動時間は 90 分程度,染色・脱色
   時間に 60 分程度を要する.



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