海洋生命理工学実験 2020


はじめに
 タンパク質,糖,脂質などの生体分子は,細胞あるいは生体内ではたらき,何らかの形で生命活動に関わっている。
基礎的であれ応用的分野であれ生命科学を研究するものが,生き物自体に興味がない,もしくは,生きた細胞をよく
見たことがない,生きた細胞をイメージできない,という土台の上にいたのでは,どんなにおもしろそうな物質を手に
しても,何も発見できないし,生き物にとって役立つ何かを生み出すことも難しいのではないだろうか?
 この実験科目を通じて,まず,生き物,生きた細胞に触れ,観察し,生き物に対する興味と感性を育てて欲しい。
さらに,そのうえで,顕微鏡では直接的には見ることができない遺伝子の発現を調べる原理と技術を身につけてもらう。

(1)ムラサキウニの正常発生の観察

 ほぼすべての動物の個体は,受精卵という 1 つの細胞から生じる。受精卵は,雄の配偶子(精子)と雌の配偶子(卵)が
受精してできたものである。発生の過程では,細胞の増殖と分化,形態形成,細胞間あるいは組織間の相互作用といった現象を経て,
受精卵がその種固有の姿をもった個体となる。ウニは,発生学におけるモデル動物として古くから用いられ,室内飼育が可能な
様々なモデル生物が台頭してきた現在でも,その地位は不動である。採卵,採精が容易で,卵割,発生の同調性が良い。また,
種によって違いはあるものの,卵の透明度が高いので,初期発生(卵割)を観察する上では絶好の材料である。

  

★ レポート

  
実習で配布した紙資料に従いスケッチを取り,提出すること。紙資料には,実習中に最低限,観察して欲しい発生段階
 および各段階の胚に見られる特徴が記載されている。受講生がそれらをしっかり観察したかどうかは,スケッチから判断する。

★ スケッチの提出期限
   
   全員提出完了 現在評価中


(2)半定量的 RT-PCR による遺伝子の発現解析

 PCR 法を応用的に使うことで,特定の時点の細胞,組織あるいは生体における遺伝子発現の変動を調べることができる。
この方法ではまず,比較する試料から RNA を抽出し,mRNA を相補的 DNA (cDNA)に逆転写する。この cDNA を鋳型に,
調べたい遺伝子(gene A とする)の配列からデザインしたプライマーを用いて PCR する。その結果,任意の増幅サイクルを
経て増幅した DNA の量は,鋳型として反応液に加えた gene A の cDNA の初期濃度(gene A の mRNA の初期濃度)を反映
している。つまり,PCR 産物を電気泳動によって分離し,得られるバンドのシグナル強度を比較することで,調べたい遺伝子
(gene A) の mRNA の量(≒転写量,発現量)をサンプル間で比較することできる。この一連の実験を逆転写 PCR(RT-PCR)
という。ただし,この遺伝子発現解析法では,高感度である PCR を利用するがゆえに,様々な条件を正しく設定する必要がある。
設定を誤ると,細胞,組織,生体の実際の様子とは全く異なる結果,最悪の場合,正反対の結果が導かれてしまうことさえある。
この実習で,各手順の原理を理解したうえで,各条件設定についても自身で検討できるようになって欲しい。


 以下の 1)〜3)を実験メニューとします。

 1)ムラサキウニ胚からの total RNA 抽出/RNA の品質チェック

 2)逆転写反応による cDNA 合成

 3)RT-PCR




レポートについて

 レポートは,1 人 1 通作成し,提出してください。


★ レポートに最低限かくこと
 
   1. 実験のまとめ

  目的,方法,結果をまとめて下さい。方法は,実際にやったことを簡潔に。配った手順書と,実際にやったことは
 ちがったところもあったはずです。結果は,ダウンロードした写真をコピペするだけではダメです。文章でも説明すること。
 矢尻や引き出し線などを追加して,読み手がすらすら分かるように工夫して下さい。この実験を履修していない友達が読んでも
 分かるような書き方が理想です。結果から分かること,自分なりに考えたことなどを「考察」として書いてください。

  考察のヒントとして,他の班や他の人の結果を見比べて,違いが出ている点は,それらの結果から予想できることや
 そうなった理由などを考えてみてください。考察として書けることは他にも色々あると思います。


  2. 課題
 
  メニューごとに課題を設定します。具体的な課題は,それぞれのページに書いておきます。

★ レポート提出期限
 
   
  日本時間 9 月 7 日(月) 12:00 【正午】まで です。

 提出場所は,2 通り設定します。どちらかに提出。

 1つ目: 理工学部 2号館 3 階の 331室前のボックスに紙のレポートを提出する。

 2つ目: 郵送する場合は,〒780-8520 高知市曙町2−5−1 高知大学理工学部 砂長研究室 あてに送付して下さい。

 3つ目: moodle に設定したレポート提出箱に電子ファイルで提出する。ファイル形式は pdf ファイルか word ファイルで。


★他の人や先輩のレポートのパクリ(コピペ)が発覚した場合,厳しく対応します。実験だけでなく,1 学期の単位全部没収です。
 これは,砂長が決めたルールではなくて,高知大学のルールです。



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