無機蛍光体材料の高機能化および多機能化
外部から光や熱などのエネルギーを受けて,物質中の電子が基底状態から励起状態に遷移し,再度基底状態に戻る際にその大半を光として放出する現象を蛍光(ルミネセンス)と呼ぶ。蛍光体とは,その蛍光の原理に基づいて発光を示す物質を指す。蛍光体は,蛍光ランプや白色LEDといった照明分野,ブラウン管や液晶テレビなどの表示デバイス,近年では,バイオイメージングなどにも用いられている。このような蛍光体はその応用用途によって必要とされる特性が異なるため,応用用途によって様々な蛍光体が望まれる。
本研究室では,下記の蛍光体材料を中心に開発している。
1)白色LEDに用いられる可視光応答型蛍光体の高演色化
白色LEDは,高い発光効率,環境負荷が小さいこと,低消費電力などの多くの利点を持つことから次世代の照明デバイスとなっている。白色LEDは,青色LED素子と黄色蛍光体を組み合わせることで白色光を得る二波長型である。二波長型白色LEDは高い発光効率を持つ一方で,そのスペクトルは赤色領域の発光強度が低く,得られる白色光は青白いものとなってしまう(低い演色性)。この課題に対して,新しい赤色蛍光体の開発を目指して研究を進めている。本研究室では,特に,酸化物系に対して注目して研究を進めている。

2)近紫外光を完全遮断する蛍光体材料の開発
白色LEDには二波長型以外にも,紫外LEDを励起光としたLED光源も提案されている。この方式では,高い演色性が期待できるが,人体に有害な紫外光を放出するため,紫外光の遮断をする必要がある。本研究では,紫外光領域に高い吸収効率を持つ蛍光体材料の開発をしている。 |