RT-PCRで遺伝子の発現量が比較解析できる原理は,以下の図を見てもらえば分かるはず。
遺伝子 X の発現量は,@ の cDNA の由来となっている生体サンプルで,A,Bよりも高いとする。
もしも,調製直後の PCR 反応液のなかにある遺伝子 X の cDNA 鎖の本数を数えることができたなら,
下図の上向き矢印で示すような差があることが分かり,それで解析完了となるはず,,,,,,
しかし,それは不可能。そのため,この実習では,アガロースゲル電気泳動・エチジウムブロマイド染色
によって目視できるまで,PCR で 遺伝子 X の cDNA を増幅する。

適当なサイクル数(実はここが肝心)で cDNA を増幅し,電気泳動,エチジウムブロマイド染色
により増幅された DNA を検出する。増幅する前の PCR 反応液中の cDNA の量を反映した バンドの
光強度が得られる。下図中の電気泳動写真サンプルを参照。

★ 結果 ★
この実習では,胞胚由来の cDNA と初期プルテウス幼生由来の cDNA を鋳型にして,以下の 3 種類の遺伝子の
発現を解析した。PCR に使ったプライマーで増幅される cDNA の鎖長を一緒に示す。
1. GAPDH (グリセルアルデヒド -3- リン酸脱水素酵素をコードする遺伝子)178 bp
2. FGF (Fibroblast growth factor をコードする遺伝子) 225 bp
3. Endo16 (転写因子をコードする遺伝子) 153 bp
PCR の反応条件は,以下の通り。

★ 電気泳動写真の見方 ★ GAPDH の発現量について
この RT-PCR で GAPDH の cDNA を増幅したのは,GAPDH の発現量を比較したかったからではありません。
GAPDH の発現量を内在性コントロール(インターナルコントロール,内部標準,ノーマライザーなど呼び方は色々)
として利用するために増幅しました。 内在性コントロールには,細胞・組織の違いを問わず,一定量発現している遺伝子
の発現量が使われます。実は GAPDH ではダメな場合もありますが,,。今回は,それはちょっと置いておいて,
内在性コントロールの説明も併せて,電気泳動の結果の見方を説明します。
ひとまず,比較するサンプル間で DNA のバンドの濃さ(光の強さ)に違いがあるならば,濃い方が薄い方に比べて発現量が
高いと解釈します。今回の実験なら,胞胚期での発現量がプルテウス幼生期よりも高い,低い,同程度,,という感じです。
ただし,そのように見えるままに読み取ってよいのは,内在性コントロールの発現量に差がない場合だけです。逆転写反応に
使った total RNAは,胞胚,初期プルテウス幼生のどちらも 1 ug でしたし,PCR 反応液に加えた cDNA の量も等しくした
のだから,条件はそろっているはずです。 ですが,吸光度測定による RNA 定量の不正確さや,逆転写反応でのチューブごとの
微妙な条件の違いなどを想定しなければなりません。。そういった違いを考慮して,必要ならば,結果を正しく補正します。。,
本来は,内在性コントロールの発現量を分母にとり,調べたい遺伝子の発現量を分子にして算出した相対値を使って,
遺伝子の発現量を比較します。 ただ,この実習では,ここの分析を少し簡略化し,内在性コントロール(GAPDH)の発現を
示すバンドの濃さが同程度なら,他の遺伝子(FGF,Endo16)の発現量は写真で見えているバンドの濃さのまま比較してしまおう,
というわけです。
さて皆さんの結果はどうでしたでしょうか?
-アガロースゲル電気泳動
各レーンで何を泳動したのかは,,自分たちの記録をあたってください。






★ レポート作成のポイント
上にかいた電気泳動の結果の見方を参考にして,FGF と Endo16 の発現について分かったことをまとめてください。
さらに FGF や Endo16 という遺伝子(コードされているタンパク質)について,これまでに分かっている機能を調べ,
さらに,胞胚と初期プルテウス幼生がどのような段階だったかもよく思い出して,ラッパウニの胚発生における 2 つの
遺伝子の役割について考察してみてください。
ここで大切なのは,論理性です。話の筋道が通っていれば,多少「妄想」でも構いません。筋の通った妄想なら評価します。
なかなか難しいとは思いますが,4 人でじっくり考えてみてください。
★ 課題3
RT-PCRによる遺伝子発現解析では,PCRによる増幅のステップが含まれているため,mRNA を鋳型に合成された cDNA
でなくとも,PCR の鋳型となり得る DNA が PCR 反応液に混入すると,結果に大きな影響が出ます。こうした余計な増幅を
除くための対策法を調べてまとめなさい。今回の実習で,皆さんが実際に実践した対策はもちろんですが,省略した対策や
砂長の説明や配布資料には載っていない対策もきっとあるでしょう
★ 課題4(取組むかどうかは各班の任意とする)
課題3に書いた文章に関連して,仮に,鋳型としてはたらく DNA が完全に cDNA だけという PCR 反応液を準備できたとしても,
実際の細胞や組織における発現量を反映しない結果になってしまうことがある(実は,割と簡単にそういう状況に陥る)。
そこで,どうしてそうなってしまうのか(どういうときにそうなるのか)について説明し,さらに,それを解決する方法について
も記述してください。 課題 4 を無視しても,レポートに満点の評価はつくような採点基準になっています。知識の深化,,点数の
上積みを目指す班は,ぜひチャレンジ!
1) total RNA 抽出/RNA の品質チェック
2) 逆転写反応による cDNA 合成へ
TOPへ