水族環境学研究室では,海の豊かさを支える微生物の働き・生きざまにフォーカスを当てた教育・研究を展開しています。
魚介類を健全に育成するために,赤潮や魚毒性中毒問題の解決に向けた研究に取り組んでいます. また,産業への応用も視野に入れ,海洋環境における植物プランクトン,細菌,ウイルスなどの生きざまを明らかにします。
ある植物プランクトンが異常なまでに増え,海面が色づく現象を赤潮と言います。この赤潮によって大量の魚介類が死に,それによって甚大な漁業被害が生じると,水産業は成り立ちません。
画像の植物プランクトンはシャットネラ属藻(Chattonella)というもので,史上最も大きな被害を与えてきた赤潮原因種です。ですが・・
「これら赤潮原因種がどのように増えるか?」
この単純な疑問に対する答えは未だにありません。そのため有効な赤潮被害対策を打ちたてることができない現状にあります。そこでフィールド調査・培養試験を通じて,赤潮原因種の増殖メカニズムを解明し,赤潮に対応できる豊かな海づくりに貢献しようとしています。
海には毒をもつ微生物が生息しています。わずか数ミクロンの有毒微生物が魚や貝に食べられると,それらに毒が蓄積されていきます(図)。このように毒化した魚貝類は,ヒトの食中毒を引き起こすことがあるので,食の安全の面から大きな問題です。
ところが,毒化の原因となる有毒微生物については,多くの場合,正体をつかめていません。最新の次世代シーケンサー技術を活用しながら,毒化原因微生物の特定を進め,シガテラに代表される魚貝類の毒化現象を解明しようとしています。
一部の微細藻類はバイオ燃料として有用な脂質を生産することが知られています。そのほとんどは淡水産。今後の水不足を考えると,無尽蔵ともいえる海水を利用して増殖可能な海産微細藻類が,バイオ燃料の生産者として有利であると考えられます。
ですが,高品質なバイオ燃料の生産を実現するためには課題が山積みです。特に,燃料の生産性を向上させ,生産コストの削減を図る革新的技術開発は極めて重要となります。
そこで本研究室では、強力な遺伝子のスイッチ(プロモーター)を開発し、バイオ燃料の生産に関わる遺伝子に連結して、これを海産微細藻類に導入して発現させる実験を行っています。これにより、炭化水素高生産能を持つスーパー海産微細藻の創生を目指します。
食卓にのぼる魚貝類は植物プランクトンの一つ”珪藻”からできている――と言っても過言ではありません。熱帯雨林に匹敵する生産力(光合成)をほこるゆえに,珪藻は魚貝類を育てる「海の牧草」とも称されています。
そんな重要な珪藻ですが,我々や動物と同様,ウイルスに感染することがわかってきました。
わたしたちは,高知大学キャンパスに近い沿岸域において海洋調査を実施してきました。先ごろ,珪藻に感染して細胞を「溶かして殺す」ウイルスを分離することに成功しました。この新しいウイルスを材料に「海の牧草 vs ウイルス」の生態学的な関係を明らかにしようとしています。