整備中の素材

 
Ver. 0.14 (2009/11/9)

食塩水からの氷の結晶化

氷と水を共存させた上で,水の部分にNa+とCl-を1個ずつ加えました.
温度を氷の融点より低めに設定すると,少しずつ凍っていきます.
その際,Na+やCl-の近傍では固化が起こりにくい傾向が見えています.

食塩は氷結晶に入りにくいのです.

海水は凍るとき,真水だけが凍り,塩分は氷に入らずに海水中にとり残されていくといわれています.海氷が形成される際には,同時に食塩濃度の高い海水ができるのです.この海水は密度が高いため沈みこみを起こし,これが深層流のルーツになるとも言われています.
ここでは,食塩水を少しずつ凍らせた際に、Na粒子(ナトリウムイオンNa+)やCl粒子(塩化物イオンCl-)が氷結晶には入りにくいことを原子レベルで眺めてみたいと思います.

なお,純水の固化アニメーションはこちら(外部サイト)をご覧ください.

192個のH2O分子(= 284個のH原子 + 192個のO原子)からなる固−液共存系の液相部分に,1個のNa粒子(ナトリウムイオンNa+)と1個のCl粒子(塩化物イオンCl-)を加えて,-10℃(= 263 K)に保持しました.

時間がたつにつれ,少しずつ内部エネルギーと密度が減少していきました.固体の氷部分が拡大していき,やがて全体が固化したのです.
その様子を原子レベルのアニメーションで眺めてみましょう.

固化が進んでいく様子












水分子(H2O)が六角形状に 規則正しく並んでいる部分(左側)が固体の氷,不規則に並んでいる部分(右側)が液体の水です.
液体部分(固体部分との境界近く)には,Na粒子(黄色)Cl粒子(緑色)が1個ずついます.














上の図から約400 ps経過しました.
画面の下の方では,水分子(H2O)が六角形状に規則正しく並んだ部分(=固体部分)が広がりはじめています.















さらに約60 ps経過しました.
画面の下の方では,水分子(H2O)並び方が一層整ってきているように見えます.













さらに約60 ps経過しました.
画面の下の方では,水分子(H2O)が六角形状に並び,固化したといえます.
しかしながら,Na粒子Cl粒子の周辺では,水分子の並び方が乱れたままの液体です.















さらに約60 ps経過しました.
固化が一層進んできていますが, Na粒子Cl粒子のすぐ近くはまだ液体です.












さらに約120 ps経過しました.
ほぼ全体が固化して固体(氷)になりました.
Na粒子Cl粒子のすぐ近くでは, 水分子(H2O) の並び方が完全には整いませんでした.

連続したアニメーション

それでは,次に固化が少しずつ進んでいく様子を連続的に見てみましょう.
固化が進んでいく様子のアニメーション(58秒間)を見る (AVI形式,17 MB)

もっとゆっくりと眺めてみたい方は.こちらをどうぞ.
固化が進んでいく様子のアニメーション(233秒間)を見る (AVI形式,67 MB)

アニメーションをさまざまな方向から眺めたい方は,gfa形式のファイル gy273to263s.gfa (7.2 MB)をご利用ください.

Copyright by

高知大学教育学部 赤松研究室 赤松 直
岐阜大学教育学部 川上研究室 川上 紳一
東京工業大学地球惑星科学専攻 河村研究室 河村 雄行

協力者

室蘭工業大学工学部材料物性工学科 澤口 直哉