Web教材 水の状態変化  Ver. 1.12 (2009/5/10)

分子動力学法とは

分子動力学法(MD法;Molecular Dynamics method)は,計算機シミュレーションの一種で,物質の諸性質を調べる際に使われる手法の一つです.

御承知の通り,物質(固体,液体,気体)は,粒子(原子,分子,イオン)の集合体です.物質のマクロな性質(密度,硬さ,内部エネルギー等)は、粒子の配置の仕方・運動の仕方といったミクロな現象によって決まってきます.計算機の中で全ての粒子の運動を時々刻々と追跡することにより,物質全体としての性質を導きだすのが分子動力学法です.

では,各粒子の運動はどのようにして決まるのでしょうか?それは,その粒子が周りの粒子からどのような力を受けるかによって決まります.粒子は,周囲から受ける力の大きさに比例し,その粒子の質量に逆比例した大きさの加速度を受けるのです(ニュートンの運動の第2法則).




















分子動力学法の概念

分子動力学法では,
 1) 物質を構成する各粒子間に働く力何らかの方法注4で与えることにより,
 2) ある瞬間における各粒子が受ける加速度を求め,
 3) 微小時間 Δt 秒後の各粒子の座標(および速度)を求める,
といった計算を繰り返して行います.

こうして得られた,時間の関数としての全粒子の座標および速度の膨大なデータをもとに,粒子の集合体としての物質のマクロな性質が時間平均として求まります.


















分子動力学計算の流れ

注4: 本Web教材におけるH原子やO原子相互間に働く力は,H2O分子に関する精密な分子構造と化学結合・分子間力のモデルを使って与えています. 詳細は こちらの文献 をご覧ください.

Copyright by

高知大学教育学部 赤松研究室 赤松 直,南場 功充
岐阜大学教育学部 川上研究室 川上 紳一
東京工業大学地球惑星科学専攻 河村研究室 河村 雄行

協力者

室蘭工業大学工学部材料物性工学科 澤口 直哉