当研究室で重要視している水族環境問題は,主に赤潮や魚毒性中毒・貝毒です。
ここでは「赤潮」について,次のメニューに沿って紹介します。
世界各地の沿岸海域では,写真のような「海面が着色する現象」が
しばしば見られます。これは赤潮とよばれていますが,なぜ海面が着色するのでしょうか?赤潮とは何なのでしょうか?
答えは,海水に棲息する小さな小さな植物プランクトンにあります。
海の中には,0.01mm〜0.1mm程度の植物プランクトンが数多く生息しています。
これらのプランクトンは,分裂を繰り返すことで,その数を時に急激に増やしていくことがあります。
特に,水質汚濁が進んだ沿岸域では,植物プランクトンの「エサ」に相当する
栄養物質が大量に含まれており,それを獲得したプランクトンが大量に発生することが多々あります。
このような「大増殖」の結果,海面には,大量の植物プランクトンが存在することになり,我々の目には「海面が着色」
したように見えるのです。つまり赤潮とは,プランクトンというミクロな生物が大発生(図)することで,我々の目に映るように
なった生物現象なのです。
今年の夏に発生した赤潮の写真※海面が濃い紫色になっています。
植物プランクトンの中には,魚介類に害をもたらすものが存在します.
このような有害プランクトンが「大増殖」して赤潮を引き起こすと,そこに生息する多くの魚介類を死に至らしめます。
原因は諸説ありますが,
ハマチやタイ,真珠貝やカキなどの「多くの魚介類が養殖されている内湾」で有害な赤潮が発生すると,イケス内の養殖魚介類が
一度の赤潮で全滅することもあります。
そのため,漁業者や関連業者にとって有害赤潮は頭の痛い大きな問題となっています。
ここ最近ですと,2009年,2010年に,九州の有明海・八代海において発生した赤潮は,その海域の漁業に壊滅的被害を与えました。
被害額は数十億円に達しましから,赤潮が水産業の脅威となっていることを物語っています。
また,有害赤潮に伴う被害は,わが国だけでなく,アメリカ合衆国,ヨーロッパ諸国,オーストラリア,東南アジア,
中国,南米諸国といった世界の国々で発生しています。しかも,これまで報告されたことのないプランクトンが赤潮を引き起こす,
「新型赤潮」も発生するようになり,被害はますます深刻化する傾向にあります。
赤潮による被害を食い止めるためには,赤潮を引き起こす新型種を含めたプランクトンが,なぜ「大増殖」するのかを明らかにすることが 極めて重要です。大増殖を引き起こす原因は一体何なのか?どのようなメカニズムで「大増殖」するのか?
さらに,それらを踏まえ,赤潮の発生を未然に予測することができれば,イケスの早期移動・避難を実施することができるので, 赤潮による被害を一層軽減できるはずです。
そのため,下に示す研究テーマについて現在取り組んでいます。