赤潮原因プランクトンによる水質汚濁物質の利用戦略 

赤潮を引き起こす有害プランクトンは,何がきっかけで「大増殖」するのでしょうか? 一般的に赤潮が頻繁に目撃されるのは,水質の汚濁が進んだ,いわゆる「きたない海」です。 このような海には,有害プランクトンの「大増殖」には不可欠な窒素・リンといった栄養物質が含まれています。 これらの物質をたくさん獲得することで,有害プランクトンは「大増殖」できると考えられています。

ところが,赤潮が頻繁に発生する,高水温期の海水を調べてみると,有害プランクトンに獲得される (と思われている)窒素・リンは少ないことがわかってきました。なぜ,このような環境下で有害プランクトンが 「大増殖」できるのでしょうか?その原因については,ほとんどわかっていませんでした。

ここで,あらためて窒素・リンについて詳細に調べてみましたところ,意外な落とし穴があったのです。 有害プランクトンに獲得される窒素・リンは,非常に小さな無機物です。我々は,このような「無機態の窒素・リン」に焦点を絞って 研究を進めてきました。

一方,水質汚濁が進んだ海域には,窒素・リンが汚濁原因物質の有機物と結合したかたちで多量に含まれています。 これらは有害プランクトンには利用されないと考えられ,あまり注目されていませんでした。 というのも,有害プランクトンにとっては,窒素・リンに結合した有機物がじゃまで,これらを丸ごと細胞には取り込めない と考えられていたからです。


ところが,研究を通じて有害プランクトンの多くが,汚濁物質の有機物と結合した窒素・リンを利用できることがわかってきました。 しかも,無機態のものと同等に,それらを用いて「大増殖」可能なことも,培養試験の結果からわかってきました。 我々は,汚濁原因の有機物に含まれる窒素・リンが,有害プランクトンの「大増殖」の重要なカギになると考えています。
そこで,有害プランクトンによる汚濁原因物質の利用戦略を明らかにすることで,赤潮の発生メカニズムを解明しようとしています。 さらに,そのメカニズムに基づいて,どのような汚濁物質を除去あるいは削減すれば,赤潮の発生を根本から抑えることができるのかを 考えようとしています。

 

 


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