Logo
高知大学総合科学系黒潮圏科学部門
index-e
サブページメインイメージ

食 品・栄 養

【このページの掲載内容】

「食」は,あらゆる生物にとって,生きていくために欠かすことができないものです。 人間にとっては,それに加えて楽しみであったり,コミュニケーションの道具であったりするとともに, 近年ではその種類や量の適切な選択により,健康の維持・増進を図ることができることも明らかにされています。

「食」について,材料としての食品やその成分の性質解明,安全性やおいしさの追求,より良い食生活の構築など, 様々な面から見つめています。

低利用ウナギ資源の利活用
 -フィリピンビコール地方ラゴノイ湾のウナギ資源-

フィリピンビコール地方は,北太平洋海流が北向きの黒潮と南向きのミンダナオ海流に分かれる海域に近く,漁業が盛んな地域です。 ニホンウナギ(Anguilla japonica)やオオウナギ(A. marmorata)などのウナギ稚魚は,産卵海域とされる西マリアナ海嶺付近から北太平洋海流-黒潮に乗って移動することから,ビコール地方の河川でも遡上していると思われますが,調査は行なわれていませんでした。 フィリピンでは,ニホンウナギやビカラウナギ(A. bicolor bicolorA. bicolor pacifica)など,東アジアで価値の高い種の稚魚は重要な輸出資源となっていますが,多く漁獲されるオオウナギは十分利用されていない状況が推測されました。 このような状況から,フィリピンビコール大学タバコキャンパスのPlutomeo Nieves博士が代表者の研究プロジェクトとタイアップし,博士課程の学位研究テーマとして取り上げました。

▲ページのトップに戻る

Anguilla luzonensis稚魚の確認に関する論文掲載(2021年4月23日)

学位研究で得られた様々なデータのうち,Anguilla属ウナギのうち,2009年にルソン島北部で発見されたA. luzonensis属がラゴノイ湾で初めて記録されたことを報告した論文が掲載されました。 DOI: https://doi.org/10.30564/jfsr.v3i1.3010

調査河川
調査河川
稚魚の種組成
稚魚の種組成

▲ページのトップに戻る

ウナギ漁業者への聞き取り調査(2019年9月5日)

ラゴノイ湾に流入するウナギ漁が行なわれている河川の一つであるアルバイ州MalinaoのComun川の流域で聞き取り調査を行ないました。 中流域ではウナギの成魚を漁獲している半農半漁の漁業者へ,河口域では稚魚を採取しミンダナオ島で稚魚の集約・出荷を仲介している業者へ出荷している漁業者を訪問しました。

アリバイ州Comun川加工
アリバイ州Comun川加工
聞き取り調査
聞き取り調査
成魚漁獲用漁具
成魚漁獲用漁具
稚魚採集用漁網
稚魚採集用漁網

▲ページのトップに戻る

【このページの掲載内容】

地域産物に関する調査と分析
 -Abo (Tigertooth croaker)干物(フィリピンビコール地方)-

フィリピンビコール地方サンミゲル湾特産のTigertooth croaker (現地名:Abo)の干物について,学術的な調査が十分行なわれていないことから,博士課程の学位研究テーマとして取り上げました。

分析用干物の加工(2019年9月9-10日)

パルティド州立大学Sagnayキャンパスの水産加工室を借りて,分析用干物の加工を行ないました。 約20㎏の原料魚を加工条件別に6群に分けて加工しました。 保存や運搬のために真空パックを試みましたが,歯が鋭くピンホールが空くことが多かったため,乾燥後の製品の歯をニッパーで切断しました。

加工用原料魚
加工用原料魚
重量測定
重量測定
加工条件別分割
加工条件別分割
塩漬
塩漬
乾燥1
乾燥1
乾燥1
乾燥2
乾燥3
乾燥3
乾燥4
乾燥4
乾燥後
乾燥後
歯の切断
歯の切断

▲ページのトップに戻る

漁業者,干物加工業者への聞き取り調査(2019年9月7日)

Abo漁は比較的小さめのはCalabanga漁港からさほど遠くない海域で行なわれています。 漁に関する状況に加え,Calabanga漁港で行なわれている競りや出荷などについて聞き取り調査を行ないました。 また,5月とは別の加工業者を訪問して聞き取り調査を行ないました。 さらに,Calabanga市場の様子を視察してきました。

漁船
漁船
陸揚げ魚
陸揚げ魚
聞き取り調査
聞き取り調査
Calabanga市場1
Calabanga市場1
Calabanga市場2
Calabanga市場2
Calabanga市場3
Calabanga市場3

▲ページのトップに戻る

干物加工業者への聞き取り調査(2019年5月30日)

加工場内部
加工場内部

Aboの干物は,ビコール地方のみならずその他の地域にも流通している有名な産物にもかかわらず,調査報告がほとんど見当たらないことから,加工,保存や出荷などについて調べるために加工業者への聞き取り調査を行ないました。

主な産地の一つであるフィリピンサンミゲル湾南岸のCalabanga(南カマリネス州)の複数の加工場を訪問しました。 家族経営規模の加工業者が多く,塩漬や製品の仕分けなどの作業は比較的小さめの建屋で行なっていました。 保存施設などがないため,一夜干しのような製品ではなくかなり乾燥度が高い製品です。

原料魚
原料魚
天日乾燥過程
天日乾燥過程
加工場外観
加工場外観
製品(仕分け前)
製品(仕分け前)
保管中の製品
保管中の製品
聞き取り調査の様子
聞き取り調査の様子
路上販売1
路上販売1
路上販売2
路上販売2

▲ページのトップに戻る

【このページの掲載内容】

学校給食センター開設
 -高知市立長浜学校給食センター内覧会-

高知市の公立中学校でで学校給食が開始されるのにあたり,市内2ヶ所に学校給食センターが設置されました。 2019年7月31日に,開設式典と内覧会が開催されましたので,見学してきました。

開設式典
開設式典
調理実習室
調理実習室
手洗い用シンク
手洗い用シンク
前処理用シンク
前処理用シンク
加熱用野菜前処理室
加熱用野菜前処理室
未加熱野菜洗浄機
未加熱野菜洗浄機
フライヤー
フライヤー
充填機
充填機
連続炊飯機
連続炊飯機
回転釜
回転釜
食器洗浄ライン
食器洗浄ライン
食器カート
食器カート
食器洗浄室
食器洗浄室
出荷口
出荷口

▲ページのトップに戻る

【このページの掲載内容】

日本の食の流通と加工を学ぶ
 -公設市場見学と日本の食材を使った調理実習-

持続型社会を実現するためには,私たちの栄養源である生物資源を有効利用することが不可欠です。黒潮圏総合科学専攻(博士課程)へフィリピンから留学している学生を中心に,公設市場の見学や日本の食材を使った調理実習を行なっています。

2017年度講義(2017年11月27日,12月4日)

2016年度は,市場に行く時間が遅く,仲買の店が数件開いているだけだったので,早朝(6時半)頃に到着して市場見学を行ないました。水産物の競りはすでに終わっていましたが,仲買さんが大きな魚をさばいているのを見学することができました。場内を見学して戻ってきたところ,ちょうどキンメダイの陸揚げに遭遇したので,近くへ見に行きました。

解体前のマグロ
解体前のマグロ
キンメダイの陸揚げ
キンメダイの陸揚げ

見学のご案内をお願いした宮川青果の和田圭介さんから,青果の競り場の案内をしてもらいました。露地物の文旦が出はじめたということで,試食をさせていただきました。場内の別棟の宮川青果で青果物の小分けや包装を見学しました。写真は贈答用のセットを見せていただいているところです。

文旦の試食
文旦の試食
贈答用フルーツ
贈答用フルーツ

▲ページのトップに戻る

2016年度講義(2017年2月27日,2月28日)

調理実習に使う材料を調達するため高知市弘化台の高知市公設水産地方卸売市場および高知市中央卸売市場(青果)へ行き,買い物や見学を行ないました。到着時間が遅かったのでほとんどの店が閉まっていましたが,必要な食材を入手することができました。

干物や塩蔵品など個人的な買い物も済ませた後,本枯節(かつお節)を入手するためひろめ市場へ移動し,昼食を摂りました。

高知市中央卸売市場
高知市公設水産地方卸売市場
高知市中央卸売市場
高知市公設水産地方卸売市場
ひろめ市場
ひろめ市場

日本の料理は,昆布,かつお節,煮干しや干し椎茸などから取った出汁がベースになっていることなどを講義で聞いた後,かつお節を削る体験をしました。削られて市販されているものは見たことがあるようですが,こんなに硬い塊から手作業で作ることできることを実感したようです。

出汁を感じるため,昆布,かつお節それぞれの出汁と両方を使った一番出汁とを比較するとともに,一番出汁と複数の味噌を使って味噌汁を作りました。写真は味噌をそのまま舐めて,味の違いを比べているところです。

かつお節削り体験
かつお節削り体験
味噌のなめ比べ
味噌のなめ比べ

海外でも有名な日本料理の一つである寿司について,細巻作りを体験しました。市場で購入したマグロ,きゅうりと沢庵漬けを芯にしました。つい,すし飯を多く載せすぎてパンクしたものもありましたが,最後はうまく仕上がりました。切って盛り付けるのも簡単ではないことを感じたようです。

細巻寿司体験
細巻寿司体験
	細巻寿司の味見
細巻寿司の味見

出汁が余ったので,だし巻き卵に挑戦しました。弁当作りで卵焼きは作ったことがあるものの,出汁が入ると巻きにくいので苦戦しましたが,何とか形になりました(巻き簾を使って整えたものもありましたが)。

だし巻き卵
だし巻き卵
だし巻き卵
だし巻き卵

▲ページのトップに戻る

【このページの掲載内容】

食中毒を防ぐ
 -厳しい衛生管理をするだけではダメ?-(日本衛生学雑誌,2015年)
施設別の食中毒発生件数の割合
図.施設別の食中毒発生件数の割合

1996年に大阪府堺市で発生した腸管出血性大腸菌O157の集団感染などをきっかけとして,集団給食施設等での衛生管理体制の確立が進みました。 その結果,毎年3万人を超えていた食中毒患者は約5年間で2万人余りへと減少しました。しかしながら,それ以降は顕著な減少は見られず, ノロウィルスやカンピロバクターなどの案件の割合が増えてきたことなどもあり,食中毒発生が通年化する傾向にあるようです。

食中毒案件の半数以上は飲食店で発生しています。一方,学校や病院等の集団給食施設では,厚生省から公表された「大量調理施設衛生管理マニュアル」や これに準じて文部省が公表した「学校給食衛生管理基準」などを活用して対策を図っているため,ごくわずかな割合となっています(上図)。

ただ,学校や病院は抵抗力の弱い子どもや病者を対象としていることから,食中毒防止へのより一層の配慮が必要となります。そこで,不幸にも食中毒が 発生してしまった施設を対象にした事後調査を行ない,その原因を探るとともに防止のポイントについて考察しました。

大量調理施設衛生管理マニュアルの再整理
図.質問分類ごとの平均満足度の比較
1:全回答者,2:性別,3:年齢,4:勤務年数,5:職種.
D:職場環境,C:勤務条件,F:施設・設備,B:仕事,E:教育研修.
各グラフ中のアルファベットは,多重比較により有意差がない組み合わせを示す.

食中毒発生後,約2ヶ月後の施設設備や調理業務の状況の実地調査,事務部門と栄養部門の責任者へのヒアリング調査,管理栄養士・栄養士,調理師や調理補助員等への アンケート調査などを実施しました。

「大量調理施設衛生管理マニュアル」に記載のある重要管理事項であるA.記録・点検,B.設備およびC.運用状況のいずれについても,大きな問題点は見出されませんでした。 ヒアリング調査によっても日常の業務として「大量調理施設衛生管理マニュアル」の活用などによる職員教育が長年行われてきていることが確認されました。

職員によるアンケート調査の結果,施設・設備,教育研修や仕事に対する満足度については比較的高い結果となりました。一方,職場環境は概して評価が低く,特に若い職員の方が,          低い満足度であることが分かりました(上図)。栄養部門の長所に関する回答について,29名中5名が「ない」と回答しましたが,この5名の回答をさらに分析すると,自由回答欄には 食中毒の原因となった調理器具の使用方法や管理体制の問題体制などを指摘していたことが分かりました。

以上のことから,大量給食施設における食中毒の防止においては,

    「大量調理施設衛生管理マニュアル」を活用した
  • 施設設備体制構築
  • 調理業務の適切な運用
  • に加え,
  • 職場の満足度向上
  • 批判的意見を言える雰囲気づくり
などが大切であると考えられました。

▲ページのトップに戻る

【このページの掲載内容】

KU
KS