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プレカット木造住宅高知駅構造試験機

より快適で安全な住生活を営むために、生活圏での森林資源の利活用を考え、自然環境と共生する社会を目指す


研究内容RESEARCH INTEREST


研究の方向性
 本研究室は、木造建築の構造性能、木材利用を専門としています。木材および木質系構造の力学的挙動を知り,合理的な利用や設計を可能にするための研究を日々行っています。最近は、地域活性化や国産材利用、防災も意識しながら、これらの研究を進めています。「木造建築」、「防災」、「木材利用」がキーワード。

木質構造や木質材料、木材利用関連の技術相談・依頼試験・共同研究など、大歓迎です。メールでお気軽にお問い合わせください。

今年度、走っている研究テーマ(卒論テーマと野口単独のテーマを含む)
新しい木造建築関連
・木造ビル建築を想定した木造ラーメン構造の開発・実験的研究

・木造高層建築用

防災・耐震関連


過去の研究課題紹介

@近未来の巨大産業、木造ビル建築を描く
-木造ビル建築を見越した新たな木質材料・木質部材開発-


 戦後拡大造林した国内のほとんどの山では、今後10年以内に、利用の時期に入ります。しかし、人口減少に伴い、住宅需要の低下が予測されています。つまり、やっと日本の山の木が利用できるような状態まで育ったのに、木材の利用先が先細りになって使いようがないという状況に陥っています。中長期的な観点からは、木材利用の用途拡大には、民間建築への需要開拓がキーポイントと考えています(公共建築はマーケットが小さすぎる)。【これまでの実績】民間建築では、ラーメン構造が求められますが、既往のラーメン構造用の接合部の性能が低く、他構造と競争できません。約30年間、接合部が強く作れないとの課題を抱えてきました。「先輩たちが約30年間、強い接合部が作れなかった」事実から、私は「接合しやすい部材を作ればいいのでは」との考えに至りました。そして、枝付柱、I型木質部材という2つの新しい部材を考案・開発しました。それらの部材を用いて、木質ラーメン架構を開発し、耐震性能が飛躍的に向上する事を明らかにしました。実験により従来の接合法の約3倍の強度で、粘りがある事を明らかにし、約30年間の課題に対する一つの回答を発見しました。

I型木質部材I型木質部材2 I型木質部材を用いた木質ラーメン I型木質部材の接合部枝付柱

枝付柱を用いた木質ラーメン 枝付柱を用いた木質ラーメン2

【木造ビル建築関連の過去の研究テーマ例】

I型木質部材とそれを用いたラーメン構造の開発-(その1) コンセプトと端部接合部性能(2011)

I型木質部材とそれを用いたラーメン構造の開発-(その2) 柱折損余裕度の解析的検討(2011)

I型木質部材とそれを用いたラーメン構造の開発-(その3) 通し柱の必要割り増し応力(2011)

I型木質部材とそれを用いたラーメン構造の開発-(その4) 実大端部接合部性能(2012)

半剛接合を有する木質ラーメン構造の水平変形略算法およびD値法の誘導(2010)

木質モーメント抵抗接合における複合応力の影響(2008)

Development of wooden portal frame structures with improved columns(2006)

直角部材を用いた木質ラーメン構造の開発(2005)

枝付柱を用いた木質ラーメン構造の開発(2005)

Development of wooden portal frame with improved column and its design method(2005)

Design Method of the Knee Joints using Adhesive for the Wooden Portal Frame Structures(2004)

Mechanical Models of the Knee Joints with Cross-Lapped Glued Joints and Glued in Steel Rods(2004)

New Proposal for Estimating Method of Stiffness and Strength in the Bolted Timber-to-Timber Joints and It’s Verification by Experiments(II) -Bolted Cross-lapped beam to column Joints(2004)

直角部材を用いた木質ラーメン架構(2003)

New Estimating Method of Bolted Cross-lapped Joints with Timber Side Members(2002)

合わせ梁型モーメント抵抗接合部の回転剛性,降伏モーメントの評価法(2002)

Study on cross-lapped joints(2002)

集成材門型架構のためのボルト締めクロスラップトジョイントに関する研究(2001)


【木質部材開発関連の過去の研究課題例】

木質I型部材とそれを用いたラーメン構造システム開発に関する取り組み(2011)

Development of wooden semi-rigid frame with improved column and proposal of design methods(2006)

Estimating Method of Stiffness and Strength on Timber Knee Joints with Adhesive and It’s Verification by Experiments(2006)

直角部材を用いた木質ラーメン構造の開発(2005)

枝付柱を用いた木質ラーメン構造の開発(2005)

部材強度を越える接着柱-梁接合の開発と力学モデルによる耐力発現機構の解明(2005)

直角部材を用いた木質ラーメン架構(その1)(2003)

直角部材の開発―交差部のせん断破壊の検討−(2003)


A巨大地震でも安心な木造住宅の実現を目指す
- 木造住宅の耐震性能 -

 高知県は南海地震想定で、津波だけでなく、揺れも震度7地区が非常に大きいので、想定地震波が入手でき次第、手を出していきたいと思っています。また、震度7は、今の建築基準法では完全には保証されていないというのが専門家の本音です。【これまでの実績】施主の要求の多様化にともない、耐震的には好ましくない形状の住宅のニーズが増えてきています。また、既存不適格の住宅も多く、木造住宅の防災は、大きな社会問題です。実物の木造住宅3棟の破壊実験や地震シュミレーション、耐震補強法の開発等を行ってきました。研究成果の一部は、共同開発企業により、商品化されています。


実大木造住宅加力試験 時刻歴応答解析   耐力壁(耐震補強)

【耐震関連の過去の研究テーマ例】

通し柱の必要割り増し応力(2011)
柱折損余裕度の解析的検討(2011)
天然秋田杉銘木を用いた木造文化財建築物の保全・活用方法の検討(2010)

半剛接合を有する木質ラーメン構造の水平変形略算法およびD値法の誘導(2010)

伝統的構法による木造住宅の性能検証/設計法の考え方(2010)

旧料亭金勇の基礎的構造要素の調査(2010)

3D full-scaled static loading tests and seismic evaluation on wooden houses with the intermediate story(2008)

木質耐震要素におけるエネルギー吸収機構の定量評価の試み(2008)

耐震補強を対象とした先孔の大きなGIR接合(2007)

目でみる木造住宅の耐震性(2007)

既存木構造の補強技術の開発事例(2007)


 


B建てられない木造建築を建てられるようにする。
-未解明の接合部・部材のモデル構築と実用的設計法の開発



 建築の場合、建築基準法があり、安全性を検証できなければ、違法となり建設できません。設計資料が整備されて、初めて、一般の建築士が設計できるようになります。大型木造建築物に必要な接合部の設計資料は、研究知見の備蓄も不十分で、一部を除き整備されていません。接合方法、部材寸法、樹種、ディテール、等級などの組み合わせごとに強度等のデータが必要であり、ほぼ無限の条件のデータがいるからです。このような場合、モデルが提案されるのを待ち、モデルから算出された値を強度値として整備するのが一般的です。しかし、モデル自体殆ど提案されていません。【これまでの実績】ボルト、ドリフトピン、合わせ梁型半剛接合、GIRの柱梁接合、接着クロスラップの柱梁接合、枝付柱、有孔梁を対象に、実験観察やFEMの知見から、オリジナルなモデルを構築し、そのモデルをベースとした実用的な性能評価法を提案しました。これらのモデルの一部は、日本建築学会編集の図書「木質構造の基礎理論」に採用されています。


有孔梁 合わせ梁 接着接合

ドリフトピン モーメント抵抗接合 柱脚接合

   

【接合部関連の過去の研究テーマ例】

少数本で構成される鋼板挿入ドリフトピン接合の初期剛性と終局変位算定法(2011)

木質鋼板単体ボルト接合のせん断力?すべり量関係算定式の提案(2010)

材端に設置された木質鋼板単体ボルト接合の繊維直角方向荷重に対する強度算定法の提案(2009)

ボルトくさび効果の力学的解釈とそれにもとづく強度算定式(2009)

木質鋼板単体ボルト接合の繊維方向荷重に対する強度算定法の提案(2009)

長ほぞ差し車知栓締めの引張り性能(2010)

小根ほぞ差し接合(引張,回転)(2010)

繊維直交方向加力をうける木質ボルト単体の縁距離・端距離・径長比をパラメータとした破壊強度算定式の提案(2008)

木質構造接合部の割裂破壊強度算定法(2008)

木質ボルト接合の強度その2-繊維直角方向加力(2008)

破壊形態の力学的解釈の試み(2007)

集成材鋼板挿入ドリフトピン接合部のアラミド繊維による端部補強効果(2005)

木―木ボルト接合部における剛性,耐力評価法の新提案と実験による検証(2003)

ボルト接合部の面圧性能に及ぼす荷重履暦の影響(2000)


C「良い木材は高く売れる」社会を目指す。
-柱の見える地域型木造住宅をより建てやすく、伝統工法の接合部設計法・設計資料の整備-


【これまでの実績】
  建設途中の伝統的住宅の実大実験での耐震性能評価。小長ほぞ差し車知栓締め、小根ほぞ差し込み栓打ちに対して、接合部設計法を開発し、日本住宅木材技術センターのデータベースでの設計資料の整備をしました。ホームページ(http://wdb.howtec.or.jp/wdb.html)で公開されています。

仕口 追掛け大栓継ぎ 小根ほぞ 工事中の伝統的木造住宅の加力試験

【伝統工法建築関連の過去の研究テーマ例】
伝統的構法による木造住宅の性能検証/設計法の考え方(2010)

旧料亭金勇の基礎的構造要素の調査(2010)

天然秋田杉銘木を用いた木造文化財建築物の保全・活用方法の検討(2010)
長ほぞ差し車知栓締めの引張り性能(2010)

小根ほぞ差し接合(引張,回転)(2010)




D木材の超長期利用、野外利用での「安心」を勝ち取る
-木材を長く使うための新しい劣化診断・補修方法の開発-



 既存木造住宅の維持補修、土木等の野外利用の観点から、簡易で精度の良い劣化診断・補修方法の開発が求められています。【これまでの実績】蟻害による部材断面欠損率と圧縮強度低下を表現できる新しいモデルを開発しました。蟻害をうけた木材にエポキシ樹脂を注入する補強法を開発し、設計強度まで回復する事を実証しました。さらに、蟻害木材の打撃音には、空隙音がする事に注目し、打撃音で蟻害による断面の欠損率を推定できる新たな非破壊診断法を開発しました。この補強技術は、コンクリートのひび割れ補強業者から、製品化されています。
 
蟻害 有限要素法    蟻害強度のモデル化 
 新しい蟻害診断法 蟻害補強法 エポキシ注入 シロアリ

      補強例 根太の修復

【耐久性関連の過去の研究テーマ例】

シロアリ被害を受けた木質部材の打撃音診断法とそのめり込み性能評価(2010)
蟻害木材の打撃音(2009)
シロアリ被害を受けた木材の縦及び横圧縮強度(2008)
木質部材の義害と補強について(2008)
蟻害木材圧縮強度低下の一考察(2008)
蟻害による強度低下と力学強度モデル(2008)
生物劣化による木材の強度補強方法の研究(2007)
シロアリ被害による実大材の強度低下とその補強(2007)
木質構造の蟻害に関する研究−蟻害による強度低下と補強の試み(2007)




バナースペース

高知大学農学部森林科学コース木材利用工学研究室

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高知県南国市物部乙200
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