生体機能物質工学実験 II

2. 分子生物学的実験法/遺伝子工学的実験法 (〜2002)

担当: 藤原滋樹 / 鈴木知彦 / 湯浅創


はじめに

生物の体は細胞でできており、”生命活動”の基本は”細胞の機能”であると言えます。
細胞の活動を支える主役は分子機械であるタンパク質です。そして、タンパク質の
設計図が遺伝子です。私たちは、生命活動のメカニズムを知るために、タンパク質の
機能を知る必要があります。そこで、ある特定の機能を探るためには、その機能を担う
タンパク質を直接精製するか、あるいはその設計図を手に入れる必要があります。
 生物の持つタンパク質を精製し、その機能を調べることは非常に重要なことですが、
しばしば重要な機能を持つタンパク質は細胞の中にほんのわずかしかありません。
例えば、ホルモンの受容体や、転写調節因子のようなタンパクの多くは 1 個の細胞の
中に 1000 分子ほどしかありません。そのような場合には遺伝子 DNA そのものや、
mRNA のコピーである cDNA といったような”設計図そのもの”を手に入れることが、
とても有効な手段になります。
 一旦設計図を手に入れてしまえば、私たちは、実験のたびにタンパク質を抽出・精製
しなくても、設計図を元にして(大腸菌や酵母、動物細胞を利用して、あるいは細胞の
抽出液を利用して試験管内で)大量のタンパク質を作り出すことができます。このような
テクニックは生体内に微量しか存在しないタンパク質の機能解析に威力を発揮する
だけでなく、有用なタンパク質の大量生産という応用面にも多くの貢献をしてきました。
実際、成長ホルモンやインシュリンなどは、このようにして生産されたものが医薬品と
して利用されています。  

ここでは、動物の組織から RNA を抽出して cDNA を合成し、それをプラスミドベクターに
組み込んで大腸菌に導入する一連の作業(これを cDNA クローニングという)を修得し、
さらにプラスミドに組み込んだ cDNA から、タンパクを合成してみます。この作業は、
分子生物学・遺伝子工学の基本中の基本であり、最先端の研究であっても、ここから
スタートするわけです。

皆さんが実験に臨むときには、ただ説明に書いてあるとおりに右のチューブから左の
チューブに液を移すような単純作業をするのではなく、それぞれの作業の意味を常に
頭に置いていてください。
 また、3週間半におよぶ実験は全て一続きです。最初の実験で作ったサンプルが
次の実験の材料になります。途中のどこかで失敗すると、最後までたどり着きません。
マイクロピペット等で試薬をはかるときなどは、細心の注意を払って正確に作業を
してください。



もくじ

2-1  動物組織からの全 RNA 抽出
2-2  全 RNA からの cDNA 合成
2-3  PCR によるヘモグロビン cDNA の増幅

2-4  PCR 産物とプラスミドベクターの制限酵素処理
2-5  酵素処理後の DNA 切断片の精製
2-6  PCR 産物のプラスミドへの組み込み/大腸菌への導入

2-7  大腸菌からのプラスミド DNA の精製(miniprep)
2-8  制限酵素による挿入 DNA 断片のチェック
2-9  挿入 cDNA 断片の塩基配列確認

2-10  大腸菌を利用したリコンビナントタンパクの発現誘導
2-11  リコンビナントタンパクの精製

(おまけ) 予備実験の結果

2002 年度のみんなの実験の結果 ・・・・・ 2002 年度のレポートへのコメント
2001 年度のみんなの実験の結果
2000 年度のみんなの実験の結果
  (2000 年と 2001 年のデータをみたい人は藤原まで連絡ください)
 


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