斜面災害
高知県の場合注意しなくてはならない地震災害として、斜面災害をあげなくてはなりません。上図は東南海、南海地震等に関する専門調査会が発表した急傾斜地崩壊による建物被害想定です。明らかに他の地域に比べて高知県、特に人口密集地の高知市周辺において被害が大きくなることがわかります。
斜面災害は場所により地質や斜面の方向、傾斜など条件が異なりますから一概にはいえませんが、傾斜地に居住している人は斜面崩壊の可能性を常に考えておかなければなりません。

図20 予想される急傾斜地崩壊による建物被害の分布
(中央防災会議「東南海、南海地震等に関する専門調査会」、2003)

図21 高知の降水量の月別平均値(1971-2000年、データ:理科年表)
と過去4回の南海地震の日付
過去の南海地震では、斜面災害については、津波、揺れ、地盤の沈降などに比べて大きな被害は報告されていません。それでも斜面災害に注意しなくてはいけないのは、被害の様子が比較的よくわかっている過去4回の南海地震がいずれも冬、つまり雨の少ない季節に起きているという事実があるからです。
雨がたくさん降って地盤が十分に水を含んだ状態では、斜面災害が起こり易くなることは広く知られています。梅雨時や秋の台風シーズン、季節にかかわらず大雨の降った後などに地震が起きた場合、斜面災害の危険性は高くなります。
さらに地震の揺れで崩壊が起きなくても、斜面にひびが入ったり、地盤がゆるんだりしているため、地震後の大雨によって土砂災害が多発することもあります。
雨の多い状態で地震が起これば、過去の記録は参考にすることができず、私たちは想像力を働かせて危険な要素を見つけなければなりません。また、かつては誰も住んでいなかったような傾斜地にどんどん居住空間が広がっていることや、昔に比べて森林破壊が進んでいることも、次の南海地震による斜面災害の拡大を考える上で忘れてはならないことです。