津波の波
南海地震で10mの津波が襲ってくるといわれても、「いっつも台風のときにやあ10mばあの波がきよらあょ」といって安心してはいけません。実は台風の波と津波の波はまったく別物です。これには大きくわけて二つの理由があります。

図26.波長の短い波と長い波
まず一つ目は、津波の波は台風の波にくらべて波長が非常に長いことです。津波の波は高いところが来てから、低いところが来るまでに数分から1時間もかかるような波です。つまり津波の波は大きな波というよりは、異常に高くて急激な潮の満ち引きのようなものなのです。
台風の波では、たとえ2mの波でも10mの波でも平均的な海水面の高さはまったく変わりません。10mの津波の場合も、長い時間で平均すれば海水面の高さは変わりません。しかし、数十分程度の時間で考えれば、海水面が10m上昇したのと同じことになります。津波が堤防を越えたり堤防が決壊した場合、あとからあとからとめどもなく海水が流入し、まさに海がふくれてきたという感じになります。

図27.普通の波高と津波の高さの違い。どちらも同じ高さの波です
そして二つ目は、波の高さの測り方です。とてもおかしな話なのですが、普通の波と津波の波の高さの測り方は違うのです。 ふつうの波の波高というのは波の高いところと低いところの差をいいます。波は平均的な海水面の上下をいったりきたりしているので、海水面より高い部分は波高の半分です。これに対して津波の高さは平均潮位面からどれだけ上昇したかを測定します。これは津波は波長が長いので、一般に波高計ではなく潮位計を用いて測定するためです。

図28.津波の波のイメージ。波というより海面上昇
したがって、津波の10mは、台風の波でいえば20mの波高に相当します。いくら高知とはいえ、台風で20mの波というのはちょっと聞いたことがありません。しかもそれが押したり引いたりするのではなく、高い状態が継続してしまうのです。ですから、決して台風の波といっしょに考えてはいけません。